第3話-2-2

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大きなふるいに粉を入れて、 『腕だけじゃなくて、上半身全体の力を使って、 いかに早く微粒に 必要分ふるわなければいけない』 そう意気込む私の後ろに、いつの間にか正造が立っていた。 「1人で全部やるのは、かなり無謀じゃね?」 ″ お前、ホントに、下品な女だな。もういい。 ″ そう、私を突き放した男。 「山岡工場長が、焼きのところまで私に任されたので…… 焼くのは、 お願いしていいですか?」 それでも 上司として、繋がっていなくてはいけない。 「わかった、 だけど、家庭用のケーキ作るわけじゃねぇから、体力的に無理があったら、直ぐ言えよ」 正造もまた、 仕事場では、今まで で変わりなく 私と接してくれていた。 「うん、ありがとう」 正造は、微笑んで、 自分の持ち場のケーキ部門にサッと帰っていく。 ……迷惑かけたくないな。 プレゼンで勝ち取ったロイヤルホテルとの契約にも、クレームにより 影響が悪く出てしまうかもしれない。 『だからこそ、失敗は許されない』
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