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卵黄と他材料を入れたミキサー。
これを機械にセッティングするのが、かなり難儀だったりする。
とにかく重い。
周りの男性を見ても、皆忙しそうに作業をしていて、元々は人見知りの私、
「手伝って」と言うことができない。
ゴツ!
うお、
か、抱えても、ちょっとしか動かない。
数センチ持ち上げて、セットするだけなのに。
…………女って非力だな。
フウ、
一息ついて抱えようとすると、
「腰痛めたら、どうするんだ?」
浅黒い、
年季の入ったシワの目につく腕が
ミキサーを一緒に抱えてくれた。
「社長……」
「重たいものを持つときは、体を落とせ、足や膝も使うんだ」
還暦を迎えたとは思えないパワフルさで、
社長は、ほぼ1人の力でそれをセッティングしてくれた。
『……思ったより、いい人?』
「ありがとうございます!」
「型入れまで時間あるから、それまで他の仕込みをしてきなさい」
社長は、
まるで工場長のように、
テキパキと形成や焼きまでを手伝ってくれる。
そんな、父親を、
正造が、無言で見つめていた。
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