第3話-2-2

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仕込みと、 形成生地の保存、焼き上がった生地の型抜き、 今日 最低限しなければいけないことを終えたのは、夕方六時過ぎだった。 タイムカードを押して、 特に急いで帰る必要もなくなった私がタバコを吸っていると、 「お疲れ」 正造が、同じく喫煙所に一休みしにやってきた。 「…………お疲れさまです」 ………………シン………… 仕事場を離れると、何を話して良いか分からなくなる。 「山岡工場長、絶対どこかでサボってるよな」 数分後、やっと正造の方から口を開いた。 「そうなの?」 「市内の施設に、いったいどれだけ頭下げてればこんな時間になるんだよ?」 言われてみたら、そうだ。 あの人、どこかで 若いおねぇさんとイチャイチャしてたりして…… 「でも、 おまえ、よく動いてたな」 「………………」 正造は、 吸い終わったタバコをもみ消すと、 それ以上は何も言わないで、また工場に入っていく。 なんか、 物足りない? ううん、 そんなことない。 今の私には、十分だ。 もう少し、ここで頑張ってみよう。 時に 失敗と孤独は 人を成長させることもあるのかも。
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