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「ぼく、アンパンチャンだよ!
僕が言った絵のボタンを押してね!」
「どっぐ………ワンワン!」
私のアパートに芹南がいる………
この当たり前のようだった光景が、
今はとても大切な瞬間のような気がして
お気に入りのオモチャで遊ぶ娘を、
スマホの動画で、思わずおさめてしまった
。
「ママ、お風呂!」
前は、
お風呂嫌いだったのに。
自分から服を脱いで、お風呂場に走っていく。
「そんなに走らなくても、お風呂は逃げないよ」
久しぶりに見る、お尻の青アザが、とてもキュートだ。
「ばーたん、ママよりオッパイおっきいよ!」
湯船のなかで衝撃の報告。
「そ、そうなんだ」
「ママ、一緒に寝る!」
「うん、お風呂から出て髪を乾かしたらね」
お風呂から上がると、あんなに元気だった芹南は、髪にドライヤーを当てると、
気持ちよいのか、ウトウトとなり、
そのまま、横向きに倒れるように
畳の上にコロンと転がって眠ってしまった。
スゥ………………
その寝息と寝顔が可愛くて、
ずっと見ていたかったけれど
時計を見たら
もう、10時40分になろうとしていた。
『あと、二十分しかない』
名残惜しいとは、まさにこの事。
「今から、連れていきます」
このまま、取り返したつもりで、あちらに引き渡さなくてもいいような気がしたけれも
そこは、押し殺して
優に電話をかけた。
「俺が迎えに行くから」
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