第3話-2-2-2

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「ぼく、アンパンチャンだよ! 僕が言った絵のボタンを押してね!」 「どっぐ………ワンワン!」 私のアパートに芹南がいる……… この当たり前のようだった光景が、 今はとても大切な瞬間のような気がして お気に入りのオモチャで遊ぶ娘を、 スマホの動画で、思わずおさめてしまった 。 「ママ、お風呂!」 前は、 お風呂嫌いだったのに。 自分から服を脱いで、お風呂場に走っていく。 「そんなに走らなくても、お風呂は逃げないよ」 久しぶりに見る、お尻の青アザが、とてもキュートだ。 「ばーたん、ママよりオッパイおっきいよ!」 湯船のなかで衝撃の報告。 「そ、そうなんだ」 「ママ、一緒に寝る!」 「うん、お風呂から出て髪を乾かしたらね」 お風呂から上がると、あんなに元気だった芹南は、髪にドライヤーを当てると、 気持ちよいのか、ウトウトとなり、 そのまま、横向きに倒れるように 畳の上にコロンと転がって眠ってしまった。 スゥ……………… その寝息と寝顔が可愛くて、 ずっと見ていたかったけれど 時計を見たら もう、10時40分になろうとしていた。 『あと、二十分しかない』 名残惜しいとは、まさにこの事。 「今から、連れていきます」 このまま、取り返したつもりで、あちらに引き渡さなくてもいいような気がしたけれも そこは、押し殺して 優に電話をかけた。 「俺が迎えに行くから」
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