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「一緒にならない?」
童顔に見せる大きな瞳は、
私の目を見て離さない。
酔って………………ないの?
「あ、あの」
「前、部屋で言ったときの、何となく流れちゃった感があったから」
本気なの?
「私、離婚は成立したけど、まだ、親権問題カタついてないし、それに」
「それに?」
「………………………」
正造の目をまともに見ることができないまま、探していたであろうセブンスターをテーブルに置く。
「東京出店は、ほんとなの?」
自分に負い目があるからか、
嬉しいはずなのに、
何か先のばしの理由をつけているのかもしれない。
そばにいたい、
だけど、
東京は難しいかもしれない。
この間、退院したばかりの母の事もある。
「東京出店は、具体的には決めてないよ。それをやって、長崎店に、効をもたらすかは分からないから」
「………………そうなんだ」
それから、
珍しく二人の間に沈黙が流れる。
「俺」
「は、ハイハイ」
「信用できない?
ネットの掲示板とかマスコミに、ヤり逃げジャニーズみたいに叩かれたことあったし………」
「そ」
そうじゃない。
そんなこと、忘れてた。
「正造に、悪いところなんか、何もないよ」
あるとしたら……
私。
だけど、言えない。
嫌われたくないから言えない。
「プロポーズしたのに、そんなに浮かない顔されると思わなかったんだけど?」
リセットできる人生なら、
昨日から。
ううん、
もっと前でも構わない。
「ちょっと、車に忘れもんしたから、とってくる。」
正造は、テーブルに置いていた車の鍵を掴んで席を立つ。
「タバコをなら………」
「ヤニじゃねーよ」
「………………………」
しっかり立って、早歩きの正造。
やっぱり、酔ってないんだ。
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