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浄化能力があるとは知らなかった。俺は、地上で能力がほぼ使えないが、守護者はどんどん進化している。どんどん差が付くようで、少々、いじける。
「天使が近くに居ると、力が湧いてくる。大好きだよ、黒井」
宗像も意地悪な面があり、俺が嫌がると余計にしてくる。宗像が御形に睨まれながら、俺に抱き付いてきた。
「俺も…」
無愛想だが、志島も負けじと俺に抱き付く。抱き付くと言うよりも、持ち上げる。
「志島、降ろして。志島!」
暫し、志島と見つめ合う。俺は、地面に降ろして欲しいのだが、志島、何か物思いに耽っていた。こういうときの志島には、言葉が通じない。
「あらあら、典史ちゃん、モテるのね…」
御形の母親は、にこにこ笑っている。天然な母親だが、どこか的を得ている。ある意味、翼を見せていなくても、翼を閉じたばかりの俺は軽いのだ。志島でなくても、本当は誰でも、俺を持てるのだ。
「さてと、私たちも帰りましょう」
ちらりと、御形の父親が志島と宗像を見た。もう不思議には慣れているだろうが、この二人は突然現れていたのだ。
志島、宗像は瞬間移動で来ていた。又、瞬間移動で帰るしかないが、人目は無い方がいいだろう。
「御形のお父さん、俺、一緒に乗って帰ってもいいですか?」
真里谷は、車で帰るらしい。俺と、直哉にはバイクがある。
すると、御形がそっとヘルメットを出した。
「俺用」
バイクの免許が無いのに、ヘルメットは用意したのか御形。
「はい、はい。送りますよ」
御形の家族が、帰ってゆく。志島と宗像を、深く詮索しないでくれて良かった。
「さてと」
桜の木に向かうと、深く頭を下げた。直哉も、同じく頭を下げる。
「ありがとうございました」
植物が、人の思いを叶えるには、長い年月と強い力を必要としただろう。
だから、嵐に負けて折れてしまったのかもしれない。
花びらが散ると、天へと舞ってゆく。幹も枝もなくなり、最後に小さな光の粒が浮いていた。
「おいで…」
俺が心を込めて、育ててあげる、かつて、直哉が俺に言った言葉だ。その言葉を言おうとしたとき、横から伸びた御形の手が、光を掴んでいた。
「俺の家の、庭においで」
光は、小さな種になっていた。
「取ったな…」
横取りされて俺がむくれると、御形が嬉しそうに笑っていた。
丘に完全な闇がやってくる。灯りを付けたが、暗さが増しただけだった。
「黒井、俺達も帰るよ」
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