第1章

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でも、そのせいで、御形の母親と一穂の寂しい攻撃が日々始まっていた。  真里谷は、俺の実家ならばビールが飲めるので問題は無いそうだ。しかも、信者には、真里谷は慣れているので、更に問題は無い。  ビールは買う気になれば、山の反対側に店が多くあるので、コンビニまで十キロは離れている、御形の家よりも便利だった。  御形の家に帰ると、一穂が玄関で待っている。一穂、最近、俺の翼を洗うのは、自分の役目としたらしい。 「典史兄ちゃん、風呂です」  洗ってくれるのはいいが、風呂の時間が長い。 「翼は、毎日、洗わなくてもいいから。今日は出してもいないし」  一穂に手を引かれて、風呂場に向かう。まるで、吐きそうの兄弟のようだ。 「はやく、翼を出してください」  でも、翼の制御は効くようにはなった。無断で翼が出ているということが、無くなった。  翼をコンパクトにしてみるか。今の大きさは、片翼でも二メートルはある。これでは洗うのに時間がかかる。ピヨのときのように、手の平サイズがいいかもしれない。  翼の大きさで、飛ぶ飛べないがあるわけではない。でも、羽の数が少ないのは不便な時もある。結界が弱い。 「一穂、少し離れて。翼の水を飛ばす」  水を拭くよりも、飛ばす方が速い。何回か羽ばたかせて水を飛ばすと、小さな虹が出ていた。 「きれい」  鈴森が空き地で亡くなったのは、一穂の年の頃だ。それから、一人で寂しかっただろう。成仏できて、本当に良かった。  俺には弟は居ないが、一穂は本当の弟のように思っていた。大切な存在であった。親のような目線で、一穂を見ているのかもしれない。  いい友が出来、いい恋人が出来と、最良ばかりを一穂に夢見てしまう。 「これが、直哉の吐き気と、許していないか!」  最良でない選択がくると、反対してしまうのか。すると、直哉も俺が結婚して、優しい家族に囲まれる事を願っているのか? 「誰が、何だ?」  直哉が、部活の汗を流しに、風呂に来ていた。 「少し、理解力を付けた。直哉の気持ちを理解した感じ」 「御形と典史の件か?」  俺が頷くと、直哉が、長いため息を付いた。 「天界では確かに、典史を育てたのは俺だ。でも地上では、その感情を引きずっているわけではない。親友だろ。俺だって理解している」  理解し合えば良いのか。直哉が、風呂場で翼が邪魔だとクレームを付ける。翼を消すと、一穂が洗っていたのにと、怒りだした。
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