第1章

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 傘も持っていなかった、どこをどう歩いたのかも分からない。大きな通りに出ると、一台の車が停まった。クラスメートの母親が、風邪をひくからと、家まで送ってあげると言ってドアを開けた。山での、事故のことが言えなかった。父が家に戻ってきて、母が居ないと騒ぎ出した。コーチも家に戻っておらず、前々から噂もあって、二人一緒に居るに違いないと、怒りだしていた。  騒ぎも噂も大きくなった、恐る恐る、現場に戻ったが、二人の姿は既に無くなっていた。影も形も無かった。あの日は幻だったのだろうか、本当は、二人は本当に駆け落ちしただけなのだろうか。  真相が、気になって、又、現場に来てしまった。 「二人、こんな場所に来ていて仲いいの?密会?手、握ったままだしね」  よく笑うが、心は無い。 「まず、木が違う。場所が違う」  直哉が、唐突に指摘した。 「そうだね、木は何本も倒れた。しかも、直ぐに雷があって、この近くで山火事もあった」  過去の映像を頼りに歩くと、苔の生えた朽ちた木が、倒れていた。 「ここかな」  消火のために、又、何本も木が倒されたのだ。景色は全く変わってしまった。森の奥だと思っていたのだろうが、実際は道の横に面していたのだ。 「死体はあるか?」  ここに倒れていたのならば、今まで発見されないなんて事はない。 「君の両親は、その後、ちゃんと離婚した。父親に聞いてみたらどうだ?駆け落ちした母親と会っているよ」  目の前に居るのは、藤木なのだろう。藤木の周辺の事情は、気になって調べていた。 「君たちは、何なんだ?何で、俺の事を知っているのだ?」  又、パニックになったようだ。 「ここで、君が母親を捨てて逃げたから、駆け落ちしたと、言っていたよ」  どこから御形が現れたのだ?俺も、驚いてパニックになりそうになった。御形の後ろに、御形の父親も居た。 「家出だそうで、君の祖母から、ここを探して欲しいと依頼があってね」  御形の父親が、やんわりと話を聞いていた。 「何だ、俺を探していたから、知っていただけか」  心の闇を見られたと思ったのだろう。確かに、それは見た。 「グローブとバットは、母親が持っているよ。特にバットは、見つかってはいけない代物だったろ?」  藤木の顔が蒼白になってゆく。誰にも言っていない秘密だったのかもしれない。 「何匹も、撲殺されていたしね…」
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