第1章

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「第1世代のスポーツモデルのメックですね…見覚えがあるのですが、名前が…」  第1世代はそのメックバトルで十何年も前に活躍したメックだ。今は第3世代目のメックが主流で、大きさもこの白いボロメックよりも一回り大きく、若干スリムだ。高橋はこのメックに見覚えはあったが、パーツが所々欠けているせいで答えに困窮した。  老人は考え込んでいる高橋を一瞥した後、白いボロメックに視線を戻した。 「ウチぁ最近じゃ自動車だけじゃなく、メックの処分もやってんだ。コイツも処分品として運び込まれたんだが、ボディが頑丈すぎて、ガタが着ているプレス機が悲鳴上げちまった」  両腕がない理由が分かった。足元に転がっているペシャンコのスクラップが、恐らく腕だったものだろう。腕は潰せたもののボディの強固さに阻まれてプレスに失敗してしまったらしい。よく見ればひしゃげたボディーの奥に頑丈なロールゲージが見える。 「で、どうだ?」 「え?」  高橋は虚をつかれ、困惑したように言葉を返した。老人はニヤリとして、白いメックを親指で指差した。 「兄ちゃん、コイツ買わないか?処分にちょうど困っててなぁ」  高橋は目を見開いて驚いた、一拍置いてから全力で首を振った。 「え!?無理ですよ!メックなんて高価なもの」  世の中に普及しているメックとはいえ、おいそれとサラリーマン(元)が手を出せる値段ではない。クビになったばかりの高橋には恐れ多い買い物だ。 「いや、格安にしとくよ。こっちとしても処分ができなくて困ってたんだよ」  老人はぐいぐいと押してくる。どうやら最初っからこれが目的でこちらを敷地内に誘い込んだらしい。高橋はたじろぎつつも、悪徳商法然としている老人のセールスを断るための言葉を捜した。 「そ、それに、もう壊れているじゃないですか!」  こう言われては、老人も反論はできないだろう。高橋はひそかにほくそ笑んだ。壊れて動かないメックを買うなど、それこそお金持ちがオブジェ代わりに置くような道楽だ。職を失ったばかりの高橋にはとてもそんな酔狂なことできるわけがなかった。これで老人も諦めるだろうと思っていたが。 「あぁ、それなら心配ねぇよ」
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