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第1章
芳村上総(よしむら かずさ)は知り合いの女子に所属サークルに連行され、衝撃の事実を知った。
漫研の腐女子が好んで読んでいるという薄い本のキャラクターが、自分と奏に似ていて、もちろん中身は自分たちがモデルかのような、淫らな内容の男同士のありなしごとで…。
舞台はなんちゃって平安時代で、雅な直衣に身を包んだ貴族の美少年の奏が御簾の中で、脇息にもたれて愛らしくうたた寝していると、都の姫君たちが熱い視線と文を待っているのに、つれない時の帝の血を継ぐ貴公子の上総、この本の中では弥生の皇子様がかぐわしい香りとともに脈略もなく、他人の屋敷の御簾内に押し入って、怯える少年貴族を押し倒して唇を貪り、手首をまとめて床へと縫い止めた皇子様が覆い被さって、少年貴族の清楚な直衣をはだけさせて、そのおぼこい体を皇子様好みのネコに仕込んで行くという…。
『抗っても麿の力には及ばぬ、か弱き身のそなたを傷つけたくはないが、麿の想いが強うてこのように…。』
浅ましくなった下肢をかの君に触れさせる。
『あれ、いと逞しくて麗しき御方。その貴き御身の纏われし、焚きしめられし衣の香が…』
『そなたを想うと、身も心も覚束なき有り様に…。愛しき御身。今一つに…。』
奥まで押し入ってその清らかな体を汚す。
『愛しきそなた。すべて麿がものぞ。麿が懐に抱きて、余人には触れさせぬ。そなたとの忍ぶ恋が麿の身も心も焼く。』
訳が分からんハートマークに彩られた話をしているが、可憐な少年貴族を凌辱している貴公子はどう見ても自分に見えるし、自分たちのベッドシーンに似た内容が、衣装や舞台背景は違っても、詳らかに描かれている気がする。
それを女子たちがきゃっきゃっ言いながら見ているとは、いくらなんでも…恥ずかし過ぎる。
上総はその本を粉々に破って踏みつけ、灰にしたい衝動にかられる自分を抑えるのに必死だった。
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