peeling.

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唇が触れ合った瞬間、羞恥心は頭をもたげたけど、拒まれたら二度と話をすることさえ、怖くて出来なくなりそうだった。 でも、彼は拒むことなどコンマ数秒も頭にないどころか、小寺翠の初めてを奪った。 斉木亮は翠を受け止めて、車の中で高め合い、その後躊躇いもなくラブホテルで、翠が欲しがるだけくれた。 次のシフトでは噛み合わなかったのか、顔が合わない日々が続き、その日は翠が我慢出来なくなって、斉木の車を置いてあるスペースで、彼を待つことにしたが、 ――本当にこれじゃあストーカーだよなぁ。―― 肩を落とした翠は、踵を返して歩き出した。 しばらく通りを歩いていると、道路の向こう側から、翠よりも二つ三つ年嵩の女性がブンブン手を振りながら接近して来て、翠はのけぞった。 「翠君久しぶりっ。」 彼女は翠の両手を握って、ブンブンと乱暴な握手をした。 「梨香さん。お久しぶりです。」 高橋梨香は翠が昔住んでいた、団地の隣人だった。古い建物だったので、バリアフリーに増改築する為に、団地内で新築した棟に移動することになり、翠の家族は数年前に引っ越した。 子供の頃は梨香によく遊んでもらった。と、言うよりもぬいぐるみか人形代わりに弄ばれたし、小学生の時の集団登校も当然同じ班で、翠は男の子らしい短い髪の毛なのに、無理やりツインテールに結わかれたり、梨香のお古の服を着せられてからかわれた。 「梨香さんだなんて、大人ぶっちゃって…。」 近くのファーストフードに引っ張り込まれて、 「翠君の奢りね?決まりぃ。」
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