冬至祭

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『違うよ!ウェンズデイが怖いんじゃないかって心配してあげただけだよ!』 ロロの尻尾は大きく膨らんだままだし、ウェンズデイの声は心なしか震えている。それでも、ウェンズデイはその場を離れようとはせずロロの尻尾を見て鼻で笑う。 『ベッドカバーを此処で守っていようか?飛ばされたら大変だしね?』 ウェンズデイの背中から離れ代わりに今度はベッドカバーにしがみつく。 「そんなにベッドカバーが心配なら持って行けば良いじゃない!ロロは私の使い魔なんだからベッドカバーじゃなくて私を守りなさいよ!」 ロロの小さな裏切りに今いる場所も忘れ大声で叫ぶ。ロロも負けじとベッドカバーを守る事がどれだけウェンズデイの為になるかを言い返す。それに対し歴代の大魔法使いの使い魔の美談をあげロロの不甲斐なさを嘆くと、そのままウェンズデイの不甲斐なさをあげつらう。 そんな不毛な戦いは1つの大きな地響きで中断された。 『……あ』 今やロロは尻尾だけでなく体じゅうの毛という毛が膨らんで、まん丸になっている。もちろん、ウェンズデイもロロのような毛皮があれば同じようになっていただろう。 《誰だ。私の家の前で騒いでいる奴は》 さらなる地響きと共にウェンズデイの頭の遥か上から地響きと同じような声が聞こえる。 『……大きい』 ウェンズデイもロロも竜を見たのは初めてではない。しかし、それまで見てきた竜は遠くから海の上を優雅に飛ぶモノであったり、人に慣れた走竜と呼ばれる馬よりも少し大きいくらいの形こそ竜とは似ているものの、竜ほどの智慧と翼を持たない生き物くらいだった。 目の前にいる竜は確かにその瞳に智慧を宿し、海の彼方を翔ける竜よりも年を経たのか遥かに大きく話す息からは火の粉がキラキラと舞い落ちている。 《私の財産を奪いに来たのか?それとも伝説に残ろうと戦いに膿んだこの私の生命を奪いに来たのか?》 岩の裂け目から、竜の頭がゆっくりと顔を出す。同時に夜が完全にあけ、竜の体に朝日が降り注がれた。 「綺麗……」 朝日を受けた竜の体は白銀と金が混じったウロコに包まれ、この世の物とは思えない輝きを放っている。ウェンズデイはその輝きに惹き寄せられるように、フラフラと竜に近付いて行った。 『ちょ!ヤバイよ!』 慌ててロロが飛び出しウェンズデイを止める。
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