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ラストとレイヴンが見守るなか、ゴドフリーは島全体に契約の陣をはる。それに気付いた炎竜は煩そうに眉間に皺を寄せた。
《身の程を知らぬ愚かな者よ。我が島に何の用だ》
「炎竜!輝く鱗を持つ者よ!お前は古の盟約により北の大地に住むのではなかったか?」
炎竜は鼻から黒い煙を吐きながら、ゴドフリーに向き合う。
《確かに私はその昔、ささやかな力を持つか弱き者に人の住まぬ地に住む事を約束した》
言うと炎竜は大きな炎をゴドフリーに向かって放つ。しかし、大きさの割には威力は少ない。威嚇のようだ。
ゴドフリーは難なくそれを跳ね返す。
「お前の今いる島は翼竜の島だ。お前が来たせいで、翼竜たちが人の住む土地に来て困っている!」
《約束をしたのは、人の住まぬ土地だ。竜の住む土地に来ても約束を破った事にはならない。翼竜と人の問題ならば、翼竜と人で解決すればいい》
炎竜はゴドフリーの頼みを聞く前に一蹴する。
ゴドフリーは一瞬言葉に詰まるが、ラストに大見栄を切った手前、挫ける訳にはいかない。
『あいつ、なかなかやるな』
真正面から炎竜に対峙する姿を見て、レイヴンが少し見直したように口笛を吹く。
「セントラルの魔法使いなんだ。新人でもそれくらいはやって貰わなきゃ困る。それよりも、問題はこれからだ」
『ややこしい事にならないと良いけどな』
馬鹿にしたように笑うレイヴンにラストはため息で答える。
「やるのは俺たちだぞ?本当に手頃なところで手を引いてくれる事を祈るよ」
そんな2人の会話は聞こえてはいないが、ゴドフリーは次の手に出る事にする。
「どうしても、この島を退かぬと言うならば、真実の名でもってお前を北の大地へと帰す!」
その言葉に炎竜は大きく炎を上げて笑う。
《身の程を知らぬ愚かな者よ。私の名を暴くと言うのか?やりたければやってみるがいい》
ゴドフリーは大きく唾を呑み、炎竜の本質へと迫る。
「竜の中の竜よ。お前は灼熱の炎」
《ご名答。それだけでは真実の名には程遠いがな》
炎竜は大きな翼を広げ、島を飛び出しゴドフリーを呑み込むように灼熱の炎を上げる。
「溶岩の塊、揺らぐ大地」
ゴドフリーが少しずつ本質に迫るのを炎竜は楽しそうに目を細めて待つ。
「煮え立つ大地、崩れる山々」
契約の陣の中で真実の名に迫る鎖が炎竜を繋ぎ止めていく。
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