冬至祭

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昇ったばかりだと思っていた太陽がいつしか西に傾き、辺りが赤く染まり始めてもウェンズデイの話は終わる事を知らないかのように続いていた。 《人の子よ。そろそろ帰らねばならぬのではないか?》 時の流れから切り離された存在である竜の方が逆に時間の心配をしてウェンズデイに声をかける。 「嘘!もうそんな時間なの?」 ウェンズデイは慌てて立ち上がり膝に乗ったロロを転がり落とし、自身も竜の肩から落ちそうになる。それを見て竜は更に楽しげな炎をあげる。 《落ちているのは涙の結晶だ。そんな物が冬至祭に必要だとは初耳だが、時代は変わるのだろう。好きなだけ持って行くと良い》 「楽しかったわ!今度来る時は箒に乗って来るからね!」 ベッドカバーに結晶を集めながらウェンズデイが笑う。 『今度来る時は良いとしても、今帰るのはまたベッドカバーだろ?ちゃんと着地する方法は考えた方が良いと思うよ?』 ベッドカバーだと確かに振り落とされる心配は無いが、文字通り手も足も出ない状態だと今度は校舎にぶつかるしか止める方法は無さそうだ。 「大丈夫よ。来た時だってなんとかなったんだし、結晶の重みでそんなにスピードは出ないはずよ」 答えるウェンズデイの声には力がない。 『その結晶で、怪我をしなきゃ良いけどね』 「うむむ。まあ、学園内だし怪我をしても治してくれる先生がいらっしゃるからここに来た時よりも安心ね」 2人の会話を目を細めて聞いていた竜が言葉を挟む。 《心配には及ばん。私が学園まで送って行こう。私はお前を気にいった。私の名前*****だ。その名で呼べばいつ何処にいようとお前の元へ駆けつける》 『ちょ……。それって』 慌てるロロと反対にウェンズデイは涼しい顔で竜にお礼を言っている。 「そうね!自己紹介が遅れてたわ。私はウェンズデイでこっちがロロ。私達もあなたが困っていたら、地の果てだろうが駆けつけるわよ。友達だもんね!」 『……じゃなくて』 竜の涙を集め終えたウェンズデイとロロをその広い背に乗せて、竜は来た時よりも更に早く学園へと飛んだ。 学園に着いた時には既に日が落ち、竜の配慮で学園近くの森に静かに降りたったので、誰にも竜には気付かず騒ぎになる事は無かった。
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