冬至祭

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この国では、稀に魔法力を持ち使い魔を抱いて生まれてくる子どもがいる。その子ども達は、どれだけ高貴な家柄でも逆にどれほど賤しい家の子どもでも7歳になると親から離され、正しく魔法が使えるように国に7つある魔法を教わる学園で15歳になるまで、同じ使い魔を抱いて生まれた者達と共同で暮らす事となる。 ウェンズデイが暮らす学園は7つある学園の中で一番北の端に位置するデュフォイと呼ばれる場所だ。学園子ども達やその親が選ぶ事も出来るが、大抵の子ども達は生まれた場所から一番近い学園に入る事が多い。学園はそのほとんどを秘密のベールに隠しているし、移動手段と言えば徒歩か馬車しか無いし、親だって何人もいる兄弟のたった1人の為にそう長く家を空ける事は出来ない。それでも、ウェンズデイは母親と山を2つも越えてこの学園にやって来た。 そう。この学園にウェンズデイのベッドがあり、使い魔が常に傍らにいるという事は、ウェンズデイにもちゃんとした魔法力があるという事なのだ。 7歳から15歳までしっかりと正しい魔法のあり方や、精霊の使う言語、光と闇、世界の成り立ち、薬草の知識などを学び、自然の力を操る為に精霊の名を知り契約する。そして、卒業したあかつきにはその力を国の為に使う。 本来ならば学園に入った時点で将来を約束されたも同然の選ばれた者達であるはずなのだが、ウェンズデイは15歳の卒業間近となった今でも、箒に乗れないし、あるはずの魔法は不発だったり暴走したりで一向に落ち着きを見せないし、精霊とも契約を結んでいない。いや、呼び出しにすら応じて貰えない。 もちろん、同じ学年で精霊との契約を1体も結んでいないのもウェンズデイただ1人だ。 「ねぇ。ロロ?この学園の卒業条件って、精霊と1体以上契約を結ぶ事よね?私、卒業出来ないかもしれない」 一通り暴れて落ち着いたのか、今度はロロに愚痴を溢し始める。 「落第なら良いけど。追い出されたらどうしよう。家に私の部屋まだあるかしら?無理よね。うち貧乏だもん」 来年の3月までの後たったの3ヶ月で精霊と契約しなければ、ウェンズデイの未来は全く見通しの通らないモノとなってしまう。 「呼び出しに成功さえすれば絶対上手く行くのに……」 ロロは聞いているのかいないのか、大きな欠伸で答えた。
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