冬至祭

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『ウェンズデイはさ。動物とも精霊とも言葉を交わせるんだから、動物園に就職したら良いと思うよ?』 魔法力を持って生まれた子どもは1つだけ生まれつき備わっている力がある。ウェンズデイの場合は言葉を持つモノであれば、何でも詠唱なしで会話出来ると言うのがその能力にあたる。 だから、学園に入るまではウェンズデイもロロもこの歳になるまで1体も精霊と契約を結ぶ事が出来ないなんて想像もしていなかった。 『ほら。動物園だったら、呼び出しなんかしなくても檻ん中にいてくれる訳だしさ』 「ふん!良いかもね!ロロは檻ん中で見せ物になりなさいよ!」 ロロは檻の中に居る自分を想像したのか情けない顔になると、ウェンズデイも同じように情けない顔になって、ロロが避難した木の下に座り込む。 「せめて、学園を追い出されないように、一発逆転の秘策を練らないといけないわね」 2人揃って大きなため息をつく。魔法もダメ、性格もダメ、精霊との契約も不可能とあっては良い案の1つも浮かばない。 『一発逆転なら、その性格を改めておとなしくしてるのが一番じゃない?』 「ロロ。あんたってホント馬鹿よね。今さらおとなしくしたって無駄に決まってんじゃない」 ウェンズデイがこの学園に入って8年間。小さい物は箒から大きな物は教室まで、破壊してきた物は数しれない。もちろん、破壊の仕方も魔法の暴走から物理的攻撃まで、破壊市場の異名を持つほどに多様だ。 ウェンズデイは更に盛大なため息をついて空を眺めた。 「おい。いつまで裏庭にいるつもりだ?冬至祭に使う材料集めの分担を決めるから早く教室に戻れよ」 いつの間にか授業は終わっていたらしい。教室を追い出された諸悪の根源、憎らしいクラスメイトのラストが呼びに来た。 ウェンズデイに殴りつけられた傷は治癒魔法を使ったのかほとんど目立たなくなっている。 ウェンズデイが前代未聞の落ちこぼれなら、ラストは学園創立以来の最高の魔法使いだ。史上最年少での精霊との契約、何種類もの精霊言語を扱い、これまたトップクラスの契約数、自身の能力もさることながら加えて家柄も良く、その事を驕る事なく後輩に優しく指導し先輩にも丁寧に接している。 そんな先生の覚えもめでたく、生徒達からも絶対の信頼を寄せられているラストだが、何故かウェンズデイにだけには意地悪だ。
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