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「皆が決めてしまう前に一番難しいヤツを取らなきゃ!」
ロロの呟きは風に流され、ウェンズデイはその風に乗るように走り出す。
『またろくでもない事にならなきゃ良いけど……』
ロロはうなだれたままウェンズデイの後を追うしか無かった。
ウェンズデイが教室に飛び込んだ時は、幸いにもまだ中くらいの難易度の材料担当が決まり始めた辺りだった。
もちろん、自分の席につく前にウェンズデイは【竜の涙】を担当すると大声で発言したのだが、やはりいの一番にラストが反対の声を上げる。
「箒にも乗れない癖に【竜の涙】なんて獲れる訳がないだろ。常識で考えろ。この材料集めがどれだけ重要な事か解って言ってるのか?」
冬至祭の魔法は最上級生とはいえ学生の仕事だが、新しい太陽の力を存分に引き出す為の新しい力が必要だからで、この魔法に失敗してしまうと学校だけでなく町全体にも影響を及ぼす。この学園での冬至祭の魔法は太陽の恵みを受けにくい北の地方にとっては特に重要だ。失敗など許されるモノではない。
「やってみなけりゃ解んないでしょ!私は絶対に獲って来るんだから!」
今にも噛みつきそうな勢いでラストを睨む。どれだけ重要なのかは、山を2つ越えて更に北で生まれたウェンズデイにはその魂に刻まれるほどよく解っている。しかし、失敗したら後がないのはウェンズデイも同じだ。一番難しいと言う事は一番危険だと言う事だが、はいそうですかと引き下がれるはずがない。
ウェンズデイの赤い髪が更に赤く燃え上がって今にも炎となって教室を呑み込みそうになっている。どう言っても折れそうに無いのを察したのか、ラストがため息をついて引き下がった。
「じゃあ、先生。俺はその【カナリアの羽根】でお願いします」
【カナリアの羽根】は学園で飼われているカナリアの籠の下に落ちた羽根をただ拾えば良いだけの、材料集めの中では誰もやりたがらないくらいに簡単過ぎる材料だ。
「これならいくら間抜けなウェンズデイでも集められるよな」
「どういう意味……」
ウェンズデイが言い終わらないうちにラストが続ける。
「それと、【竜の涙】。ウェンズデイも両方、いや、【カナリアの羽根】を用意しとけよ」
つまり、ウェンズデイが【竜の涙】を持ってこられなければ、きちんとラストが用意してくれると言う訳だ。
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