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言いたい文句は山ほどあったが、先生を含め教室の皆のあからさまにホッとした顔を見ればウェンズデイも引き下がるしか無かった。
材料集めの期限は3日。残った材料はそれぞれが和やかに、分担を決めていく。
「ラスト!あんたに絶対くだらない【カナリアの羽根】を持って来させてやるんだからね!」
その言葉にラストは鼻で笑う事で答えて、肩に乗ったレイヴンがラストとウェンズデイだけに判る言葉で答える。
『【カナリアの羽根】も必要な材料だぜ?あんまり言うと、自分で持ってきた時に惨めだから今から悪く言わない方が良いと思うけどな』
カッと頭に血が上りかけた時に近くを飛ぶロロが『確かに』とか『なるほど、そうかもね』とか言うので、八つ当たりはロロにする事にして教室を飛び出す。
「ロロ!あんたはどっちの味方なの!」
ロロは曖昧に、それでも先に【カナリアの羽根】を集めるように言って、ウェンズデイの手の届かない所へ避難した。
『まったく世話が焼けるよ』
ブツブツと文句を言いながらもきっちりと【カナリアの羽根】を集め部屋に保管しておくと、ウェンズデイは竜の事を調べに図書室へと向かう。
「竜の棲処って結構遠いのね……」
地図で調べた竜の棲処は学園から東南の人の入れそうにない深い山奥の更に奥にある険しく高い山の山頂近くにあった。
『どうすんだよ。これじゃあ3日どころか空を飛べない限り行けっこないよ?』
ウェンズデイは何も言わずじっとロロを見つめている。慌ててロロは広げていた羽根を出来るだけ体にくっつけるようにして畳む。
『僕、1人でなんか行かないからね!』
「そりゃそうよ。いくら使い魔と魔法使いが一心同体って言っても、冬至祭の材料は本人が取らなくちゃ魔法力が移らないんだもん。私だって魔法力はちゃんとあるのよ。昨日だって箒は飛んだんだから」
『じゃあ、箒に自分を縛り付けておくとか?』
自信無さげにロロが案を出す。
「あんたホント記憶力無いわよね。私が何回も箒に引き摺られてんの見てるでしょ。校庭ならまだ耐えられるけど、さすがにこの距離だと自殺行為だわ。でも、そうね。ようは高く飛んで振り落とされなきゃ良いんだもんね!良い事思いついた!ロロ!今夜決行よ!」
そう言って、ウェンズデイは手続きも無しに図書室から本を持ち出して自分の部屋に走り出した。
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