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『ウェンズデイの良い案って悪い事しか浮かばないんだけど……』
ロロは畳んだ羽根を広げて窓から校舎の上へと飛び上がる。
冬至祭は学園だけではなく町全体のお祭りだ。学園内でも皆が皆冬至祭の準備でウキウキとしたざわめきに満たされている。校舎の上から町を眺めると、そこかしこに冬至祭の飾りがきらめき華やかに彩られている。
『来年も此処に居る事が出来るかな?』
せめて、檻の中にだけはいませんようにとロロは祈りながら、ウェンズデイの待つ部屋へと向かった。
『ウェンズデイの考えた良い案ってそれ?』
「そ。これなら、振り落とされる心配をしなくて済むでしょ!」
鼻息荒く自信満々に見せたウェンズデイの空を飛ぶ案は非常に安直なシロモノだった。
「ま、でも誰かに見られたら格好悪いから、出掛けるのは夜中にするわよ」
『確かに落とされないとは思うけどさ?前は見えるの?』
それは、ベッドカバーを袋状に縛ってその中に自分が入るというモノだ。
「結び目から顔を出したら大丈夫よ!箒に乗れる練習する時間なんてもう無いんだから、これしか無いじゃない」
言われると少し不安になったのか、ウェンズデイは結び目をしっかりと固く結び、ほどけないように更にロープを使って結び目を固定し、中にはクッションを詰めて夜が更けるのを待った。
「涙を入れる小瓶も持ったし。夜も充分に更けたし地図もちゃんと覚えた。さ。行くわよ。ロロ。超特急で行くから、あんたも一緒に入んなさい」
尻込みするロロの尻尾を掴まえて、ベッドカバーに詰め込みウェンズデイも中に入って飛び上がる。
『危なくないのかよ!』
逃げ出そうとするロロだが、猛スピードを出すベッドカバーの風圧で出たら最後、振り落とされされる事は必至だ。
「そんなの知らない!空を飛ぶの初めてだもん!」
学校も町もあっという間に小さくなるほど高く舞い上がる。
「うわっ、綺麗!こんな景色初めてよ!あっちが私の生まれた場所よね!2日掛かったのよ。空を飛べたらあっという間に着いちゃうわ!」
『ウェンズデイ!竜の棲処は逆だよ!』
ロロはベッドカバーから顔を出そうともせず、クッションの1つに爪を立てている。
「そんくらい解ってるわよ!」
進行方向を東南に変えて、ベッドカバーは猛スピードで竜の棲処へと向かった。
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