冬至祭

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見た目はともかく、空を飛ぶ事に大成功したベッドカバーは東南の竜の棲む山へとウェンズデイとロロを運んで行く。夜に輝く星々が1つ、また1つと消えてゆく辺りでやっと目指す山が見えてきた。 『見えてきたね。まさか本当に竜の棲処に着くとは思わなかったよ。で?どうやって止まるの?』 山はどんどん近付いてもう目の前なのに、ウェンズデイは何も答えない。 『まさか。まさかとは思うけど、飛ぶ事しか考えて無かったなんて言わないよね?』 「どうしよう!竜の棲処を超えちゃう!」 『それよりも衝突の心配をしろ!』 ウェンズデイのベッドカバーよりも山の方が高く、頑張って高度を上げたとしてもこの険しい山は越えられそうにない。山はどんどん近付いてこのままぶつかればぺちゃんこになったウェンズデイとロロが出来上がってしまう。 慌ててロロはベッドカバーから飛び出し結び目を掴んでブレーキを掛けようとするが、勢いが強過ぎてスピードを弱める事すら出来ない。 『ウェンズデイ!逆向きに魔法を使うんだ!』 岩肌まで数メートルの所で何とか急ブレーキのかかったベッドカバーは何とかクッションとウェンズデイを数メートル転がすだけで止まってくれた。 『おーい。ウェンズデイ。生きてるか?』 恐る恐るウェンズデイに近寄る。 「もう!ベッドカバーが泥だらけになっちゃった!」 もみくちゃになったベッドカバーから這い出したウェンズデイは元気に怒りの声を上げた。 『ベッドカバーの心配より……』 ウェンズデイが無事だった事に安心して減らず口を叩こうとしたロロの言葉は途中で切れる。ロロはウェンズデイの後ろ、おそらく竜の棲処であろう巨大な岩の裂け目に向けられていた。 ウェンズデイも同じようにロロの見ている方に目を向ける。 「ここが竜の棲処……」 夜明けはまだもう少し先ではあるが、ずいぶんと白み始めた周りの景色に比べて裂け目はまだ真夜中のような闇に包まれている。ウェンズデイは知らぬ間に唾を飲み込む。 『明るくなるまで待とうか?』 ロロの尻尾は通常の3倍くらいに膨れ上がってウェンズデイの背中にしがみつく。その裂け目は例え夏至の昼間まで待ったとしても明るくなりそうには無かった。 「そっと入れば大丈夫よ。起き抜けの欠伸くらいを狙わなきゃ【竜の涙】なんて取れっこないわ!それとも何?ロロは怖いの?」
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