滝業師

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都会から離れた深い森の中に、人がすれ違うのがやっと、けもの道と変わらない一本道の途中に、その小屋がある。 江戸時代の関所の様に、通行人を妨げる小屋がある。 この小屋で、許可を受けた者は、白装束に着替え森の奥に向かう。 森の奥には滝があり、不浄な物を洗い流したり、精神修行など、人によって異なるが、滝業には最適の滝がある。 小屋の住人は、守山 翔というプロの滝業師で、この森の管理人でもある。 翔は、下界からのコンタクトを取らず、独りで森と神聖な滝を守っていた。 月に3人も訪れる事もない、知る人ぞ知る場所で、逆に神聖な空間を保っている様に思えた。 冬は、まるっきり人は来ない。当然であるが、そんな翔にも仲間がいる。 便利屋と言うか運送屋の、谷上浩一。ピザの移動販売をしている、白川裕美子。そして、解体屋の杉田哲夫であった。 翔は、滝業のレクチャーの他に、森の木を間引きし、薪や炭にして販売している。また、鍛冶屋もやっていたが、今はアクセサリー等の小物を制作している程度で、下界とは無縁な生活をしている。
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