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滝から小屋への帰り道、翔は考えていた。
「この達成感は何だろう?」
どんな修行よりも得られた感覚、でも、償いは終わっていない事を翔は判っていた。
小屋に着き、着替えて朝食の準備を手伝う。
翔は、食事の前に老人にお願を、
「明日も、滝業をしたいのですが、お願いします」
頭を下げている翔に老人は、
「気の済むまで滝に打たれると良い」
老人は、翔を受け入れた。
翌朝から毎日、雨が降ろうが雪が降っていても、滝に打たれ修行を行っていた。
日中は、森の管理や滝業に来た人の世話、炭を焼いたり鍛冶屋もやって、毎日を過ごしていた。
三年が経ち、翔は滝業師としても十分な力を身に付けていた。
置き手紙を残して、老人が消えた。
翔宛の手紙には、
「翔よ
わしは、別の場所で門を開く。
ここは、お前が守れ。わしの教えは、全てお前に与えた。
一つだけ約束がある。
滝業に来た人々を「生かす」これは絶対に忘れてはいけない。
短い手紙だが、翔は涙が止まらなかった。
自分の過去の償いの霧を、取り除いてくれた師匠が消えた。
そして、滝業師の翔が誕生した。
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