谷上浩一

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数日後、警察が押し寄せてきた。 責任者の浩一が署に連行され、事情を聞かれた。 「お前が、外国製のパソコンを国産にすり替えたんだな!」 警察は、浩一を犯人扱いしていた。 社長や経営陣は弁護士を雇い、浩一に罪を被せようとしていた。 浩一が、罪を被った。 街には噂が、浩一には居場所がなくなり、仕事も見つからなかった。 路頭に迷いフラフラと森に入り、気が付けば小屋の前に立っていた。 老人が声をかけた。 「お茶でも、召し上がってくれませんか」 小屋の中に入れて、浩一の話を聞いた、 お茶を二口飲み、リラックス出来たのか、今までの事を話し始めた。 話を聞き終わって老人が一言。 「明日の朝、滝に打たれてみては」 浩一は断る事は無かった。 翌朝。 滝に入る前に、 「心の声を叫びなさい」 老人はそう声を掛けた。 浩一は滝に入り、心の底から叫んだ。 「仕事がしたい!」 叫びは崖に反射して、目の前の森に消えた。 浩一は、気が済むまで繰り返した。 滝から出て来た浩一は、希望に満ち溢れた顔に変化していた。 「ありがとうございます」 老人に深く頭を下げ、下界へ戻って行った。 数日後。 浩一は、老人を訪ねて来た。 「仕事が見つかりました。ここの街で、便利屋をやります。ありがとうございます」 そう言って、手土産を老人に渡し、連絡先などを置いて行った。 老人は黙って、浩一の後ろ姿を見送っていた。
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