367人が本棚に入れています
本棚に追加
「山崎」
男が一言そう言うと、どこからとも無く現れた人物が少女の猿轡を外す。
「っ…!!」
乱暴な手つきで素早く、役目が終わると風のように去った。
「……あ、あの……」
少女は自由になった口を慌てて開いた。
「次、勝手に喋ったら斬る」
「!」
男が腰の刀に手をかけたのを見て、少女は肩をビクリと震わせた。
「いいか、今からし……」
「歳、そう焦ってはいけない。彼が怯えて何も話せなくなってしまうよ」
男の言葉を遮り、横からまた別の優しげな男が顔を出した。
「近藤さん…」
「アタシもいるわよ、土方くん」
「ヴ…山南さん……」
顔を顰める男を他所に、もう一人変わった口調の男が反対側から顔を出した。
「あら、随分可愛い子ね。本当に奴らの仲間なの?」
「……それを今から聞く」
「そうね。じゃあまずは座りましょうか。藤堂くん、いらっしゃい」
変わった口調の男が手を叩くと、先程一番初めに少女と出会った青年がやって来た。
「今緩めるからな。待ってろよ」
優しく微笑みながら少女の後ろに回り、縄に手をかけるもなかなか解けない。
「ちょ、これ、固すぎて……」
「結んだのは誰だい?」
「沖田君よ、勇さん」
「総司くんやりすぎだよ!」
苦戦しながら何とか結び目を緩めることに成功した青年は疲れたとため息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!