気節~出会い~

5/9
前へ
/33ページ
次へ
少女が起き上がると、三人の男達も部屋に入り少女を囲むようにして座った。 青年が灯りをつける。 「さて、今から質問をする。聞かれた事に答えろ、いいな」 鋭い目に萎縮し、頷くしかなかった。 「では、貴様の名は?どこから来た?」 男の質問に、少女の背中に冷や汗が流れる。 (何も分からないと言ったら……どうなるの……?) 「………」 「どうした。言えないのか」 少女が黙ると、男は眉間にシワを寄せた。 苛立った様子で舌打ちをする。 「おい」 「………わ、」 「わ?」 男は首を傾げた。 「わた…し…め、目が覚める前の記憶が無いんです……ここがどこかも、自分が誰かも分からなくて……」 どくんどくんと鼓動が加速するのが伝わる中、少女はぐっと拳を握りしめ、伝えた。 「……それが本当だという証拠は?」 「……ありません」 男は少女を睨む。 そんな男をまぁと制し、優しげな男は口を開いた。 「……こほん。君は、この屋敷の前に立っていたんだ。何も言わず、何もせずただぼうっと。俺達が君を見つけ、声を掛けた途端君は糸が切れたように倒れた。それから二日、君は目を覚まさなかったんだ」 (私が……?) 「そこで、俺達は君を敵側の間者だと疑っている」 優しげな男の目がすぅっと細められた。 「間者…?あの、貴方がたは一体……」 「俺達は巷で壬生浪士組と呼ばれている。聞いたことは無いかい?」 少女の頭の中で糸がひとつ繋がった。 「壬生浪士組……何となく…」 「あぁ。それは思い出せたようで何よりだ」 (壬生浪士組は京で恐れられている浪士集団。確かどこかの藩と争っているって言ってた…………あれ?) ー―誰が言ってたの?
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

367人が本棚に入れています
本棚に追加