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少女が起き上がると、三人の男達も部屋に入り少女を囲むようにして座った。
青年が灯りをつける。
「さて、今から質問をする。聞かれた事に答えろ、いいな」
鋭い目に萎縮し、頷くしかなかった。
「では、貴様の名は?どこから来た?」
男の質問に、少女の背中に冷や汗が流れる。
(何も分からないと言ったら……どうなるの……?)
「………」
「どうした。言えないのか」
少女が黙ると、男は眉間にシワを寄せた。
苛立った様子で舌打ちをする。
「おい」
「………わ、」
「わ?」
男は首を傾げた。
「わた…し…め、目が覚める前の記憶が無いんです……ここがどこかも、自分が誰かも分からなくて……」
どくんどくんと鼓動が加速するのが伝わる中、少女はぐっと拳を握りしめ、伝えた。
「……それが本当だという証拠は?」
「……ありません」
男は少女を睨む。
そんな男をまぁと制し、優しげな男は口を開いた。
「……こほん。君は、この屋敷の前に立っていたんだ。何も言わず、何もせずただぼうっと。俺達が君を見つけ、声を掛けた途端君は糸が切れたように倒れた。それから二日、君は目を覚まさなかったんだ」
(私が……?)
「そこで、俺達は君を敵側の間者だと疑っている」
優しげな男の目がすぅっと細められた。
「間者…?あの、貴方がたは一体……」
「俺達は巷で壬生浪士組と呼ばれている。聞いたことは無いかい?」
少女の頭の中で糸がひとつ繋がった。
「壬生浪士組……何となく…」
「あぁ。それは思い出せたようで何よりだ」
(壬生浪士組は京で恐れられている浪士集団。確かどこかの藩と争っているって言ってた…………あれ?)
ー―誰が言ってたの?
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