気節~出会い~

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あと少しで思い出せそうなのに、届かない。 誰かに言われたことがある。 「童、貴様はこれに見覚えがあるか?」 黒髪の男の声で、少女の思考は強制的に終了させられた。 その男が取り出したのは大きな風呂敷。 広げると、手裏剣と苦無が複数、小刀と珍しい小型の銃が散らばった。 「……見覚え…ありません……」 「この武器は貴様が全て持ってきたものだ」 「私…?」 (こんなものを…?分からない……) 「他には薙刀と刀と脇差があった。随分と大荷物だったが、本当に覚えていないか?」 「…………すみません」 男はますます眉間にシワを寄せた。 「怪しいな。お前」 少女の後ろに座っていた青年が唐突に口を挟む。 「アラ、じゃあ藤堂くんは彼は間者の意見に賛成かしら?」 (えっ…!?そんな……) 「ま、オレは男はどうなってもいいかなって思ってますからね」 (お、男…?) 先程から少女は『彼』、『童』と呼ばれることに違和感を感じていたが、これでようやく確信した。 彼らは少女を男だと思っているのだ。 とはいっても無理もない。 少女は男性用の袴を着用し、髪も結い上げ、女性としては有り得ない格好をしているのだから。 「ぁ、あの、私は……」 「こんばんは」 殺される前に誤解を解こうと少女が口を開いた途端、障子がすらりと開いた。 「総司君!」 青年が驚いたように声を上げる。 「何をしに来た、総司」 「これ、忘れていたので届けに来ました」
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