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総司と呼ばれた男が文を取り出した。
「何だそれは」
「その子が持っていたんですよ。縛る時に見つけました」
「何だと…?もっと早く渡せ」
「はぁい、すみません」
気だるそうに返事をし、文を渡した。
そして少女の方を向く。
「僕は沖田総司です。君は?」
沖田はどこかおどけた顔をしながら自己紹介を済ませ、少女に問いかけた。
「あ……私、」
「貴様の名は神城輝夜」
「!」
顔を顰めながら文を読んでいた男が、少女ーー輝夜に告げた。
「……俺は土方歳三。こっちは近藤勇さん。反対のが山南敬助さん。貴様の後ろにいるのが藤堂平助だ」
唐突に顔を上げ、無表情で淡々と周りの名を告げていく土方。
そんな土方に訝しげな様子で近藤と山南は問う。
「おい、歳。どうしたんだい」
「そうよ。急に心を開くなんてどうしたの?」
「どうやら俺達は『厄介もの』を預けられたらしい」
土方は近藤達に文を渡す。
「これは、会津藩からの書状だね。『ーー神城輝夜、この者を浪士組の一員として迎え入れ、且つ厳重に隠し守ること』…………簡単に言えばこんなとこか……この紙、この筆跡、間違いなく松平公なのだが、どういう事だろうか………」
驚きの表情で文を読む二人。
「あぁ、浪士組の一員として迎え入れろなど今まで一度も無かった。しかも隠し、守るだと?何を考えているのかさっぱり分からんな」
苛ついたように吐き捨てる土方。
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