(影指す)日常の始まり

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ゴールデンウィークの開けた5月の明くる日、私の通う学校への道程はあまり明るいものではなかった。 辺りを見ても、普段なら女子生徒同士や男子生徒同士で会話をしながら歩いている筈の人の顔も影が指して暗い色を見せている。 「はぁー、やっぱりこうなっちゃうよね」 「こうならない方が可笑しいだろ、なに言ってんだよひよ」 「え、ちょっといきなり声かけて来ないでよ彰」 突然私に声をかけてきたのは、一応腐れ縁で幼稚園の頃から一緒に育ってきた水城 彰(みずき あきら)だ。 彰は水球をしているからか、体格が良いし背も高いので身長が145cmの私は必然的に50cmほどの高さの違いのある彰の顔を見上げる形になる。 普通であれば上目遣いという、ことになるのだが彰は幼なじみになるので効果はない。 「それは悪かったな、でもお前が珍しく暗い表情だったから気になって声をかけたんだよ」 「あっそ、一応ありがとね彰。取り敢えずもうすぐチャイムなるし早く行くよ」 私は彰との会話を軽く打ち切り、校舎に入り上履きに履き替えて教室に向かった。 そして教室に着くと、窓際の一番後ろの席に花が置かれていた。 その席はこの陣流高校の合唱部を率いていた井ノ上 ゆかりの席だ。
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