第1章

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 がっかりした表情を浮かべるのか、まあそうだよねと悟りきったような表情を並べるのか。――――残念ながら、違いを理解できるようには思えなかった。今の〝わたし〟には。  そうしてようやく、胸ポケットに潜んでいたメモを探り当てたのだった。それこそメモがクシャっと歪むほど暴力的に。 「……ホワイトチョコレート? そんな奴は知らないね。親戚にだっていやしないよ、嫌味しか言わないような偏屈爺さんなんて」  残念ながら〝わたし〟には、メモを読むことができなかったので、チョコレートがいったい何を読み取ったのかは定かではないが、どうやら〝ホワイトチョコレート〟が関係しているようだった。チョコレートよりも油分と甘みの塊で、いわゆる身体に悪い〝毒〟。  けれど〝わたし〟は嫌いではなかった。少なくとも好青年的チョコレートよりかは。 「まあいいや。君がこのままチョコレートの沼を進むのであれば、銀紙の街でウエハースの靴屋を見つけることをお勧めしてあげようか。それとも、チョコレートまみれになって、僕らのフリをすることをお勧めしてあげようか。君がどちらを選ぶにしろ、君の人生は〝チョコレート色〟だ――――つまり、黒くて苦いか、黒くて甘いか――――所詮は、そのどちらかだ。〝白い〟人生など、初めから用意されていない。用意されることもない。ましてや作り上げることもできない。  けれど人生なんてそんなもんさ。生チョコレートのほうがゆったりと融けて、ほろ苦く粉まみれになって、非常に大人びていて、酷く地獄の最深部的な――とても分かりやすい一生だとは思うけれどね」  朝陽のせいで焦がれた色に見えた湖は、どうやらもとより小枯れた(・・・・)色をした沼だったなんて、〝わたし〟が驚くに値する事実が、もはやどうでも良くなってしまうぐらいに、チョコレートは〝わたし〟の差し出したメモを、もう一度じっくり舐め回すように読み込んでから、あたかも誕生日ケーキのネームプレートのようにパキッと食べてしまった。 「驚くことはないさ。まだ半分残ってる」  ――「まあ、僕が食べちゃうんだけどね」。〝わたし〟が口を開く間もないままに、メモはチョコレートに埋もれてしまった。  具体的な内容は分からないにしろ、どうやら〝ホワイトチョコレート〟がキーワードのようだ。次の行先を決める際の参考にしよう。
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