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それは直観というよりは確信だった。
中から出てきたのはベロア生地の小さな四角いケース。
こんな小さなサイズに、思い浮かぶ中身はたった一つしかない。
息を吐くことも忘れ、恐る恐る指先に力を込める。
パカっと音を立てて開いたそこには、シンプルな作りのストレートリングが二つ並んでいた。
「鼻は利くらしいな。」
そう言って私からその箱を取り上げて、小さい方のリングをケースから取り出した彼は私の左手を取った。
結婚式でも指輪の交換をしたからこれで2度目だというのに、今の方がずっと緊張してしまっている。
ゆっくりと薬指を目指して近付いてくるリングを眺めながら、
人は幸せでも涙が出るというのは本当だったんだな
と頬を伝う雫に妙に納得した。
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