【1】

8/18
前へ
/139ページ
次へ
まだ免許はとっていないけど、いずれは私が乗るつもりのピカピカの丸っこくて可愛い車。 その後部座席のドアを開いて身を屈める。 両親、それに2人の姉とは同じ家に住んでいるけれど、ホテルまで一緒に向かうことはない。 だって、我が家はそういう家でそれが当然なんだから。 それを今さら疑問に思うこともなければ、一緒に行こうなんて誘いたいとも思わないし、その逆もまた然り。 家族というよりは、血の繋がった者同士のシェアハウスのような希薄な関係。 適度に開いたその距離が、私たち家族にはピッタリだったのだ。 そうして、いつものツンとした表情をそのままに、運転手付きの私の専用車に乗り込んで、予約してあるホテルの名前を告げた。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4263人が本棚に入れています
本棚に追加