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そうして抱き締めていた体を少し離し、正面から向き直る。
「まおもうだいじょうぶ?」
そう心配する小さな女の子に微笑みを返し、ありったけの思いを込めたありがとうを彼女に伝えた。
キョトンとした顔をしていたものの、条件反射なのか親の躾がいいのか、最上級の笑顔で、どういたしましてと返される。
それでも照れくさそうにはにかむあこは俺の言葉を理解しているのか甚だ怪しいので、再度念を押すように言った。
「ね、あこ。…いつか、絶対迎えに行くから。」
「どこにー?」
「どこへでも行くよ。だから、約束…。」
「……?うん!だっこしてあげるよ!」
「じゃあ…そのお返しに、俺があこを世界で一番幸せにしてあげるから、ね。」
そう告げて、彼女の小さな左手の薬指にキスを贈った。
この指はもう売約済みだとでも言うように。
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