【1】

12/18
前へ
/139ページ
次へ
カツン、カツン…。 背後から、革靴が大理石を踏みしめる高い音が響き渡る。 そちらに目を向けようと身体を捩じれば、 「亜子、やめなさい。」 と、私のお行儀の悪さを嗜める父の声。 その声にビクンと体を跳ねさせて、ムスッとした顔で声の主に目を向けると、父は目頭を押さえるようにしながら俯いてしまった。 そんな項垂れるように肩を落とした父などお構いなしに、その足音は鳴り止むことなく一歩ずつ、確実にこちらへと距離を詰める。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4263人が本棚に入れています
本棚に追加