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そうして一刻程時間が流れ、とうとう会場スタッフからの呼び掛けが入り重い腰を上げる。 部屋から出た私を待っていたのは、渋い顔をした……父だった。 控室を出て、父に連れられるままチャペルの前まで来ると、扉の隙間からは讃美歌が聞こえてまた身震いする。 不躾なカメラマンのフラッシュをこの身に嫌と言うほど浴びながら、母が私のヴェールをゆっくりと下ろしていくのを、第三者のような気持ちで受け入れた。 目のふちを真っ赤にしながら、先ほど私が耐えに耐えきった涙を母は簡単に溢して「綺麗だね」と当たり障りのない言葉が添えられる。 その隣で大きく頷く父が、なぜそんなに誇らしげな顔をしているのか、私にはまったくもって意味不明だった。
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