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眞緒はその場に膝をつき、私の手の甲に唇を押し当てた。
途端に辺りから湧き上がるのは、会場が割れてしまうんじゃないかというほどの拍手と喝采。
そのどよめきに気を取られた私は、口をぽっかり開けたままの間抜け顔で、彼の右回りの旋毛をぼんやりと眺めていた。
ふと我に返ったときには、膝をついた彼が最上級のドヤ顔をこちらに向けて、してやったりとほくそ笑んでいる。
ドレスグローブの上からでも嫌悪感を抱くその行為に、込み上げてくるのは怒りと屈辱だけで私は奥歯を噛み締めた。
演出めいたその行動にオーディエンスは未だ大喜びのようだが、こちらの苛立ちは膨らむ一方で、掴まれていたその手を私は早々と振り払ってやった。
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