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すると、サツキは穏やかに微笑みながらこちらにその花束を差し出して、私の背を緩く叩きながら優しく言った。 「よかった。紅い薔薇の花言葉はいろいろあるんですよ。ご存知ですか?」 「…っ…。情熱、愛情…。だったかしら?」 「ふふ、まだあります…。“美”、“貞節”、“熱烈な恋”。そして、“あなたを愛します”。私はアスクレピオスより、紅い薔薇のほうが亜子ちゃんに似合っていると思って。」 微笑んだサツキの顔が涙で歪む。 今宵、私を差し置いて出て行ったあの男は、私に対してそのどれも感じてなどいないくせに。 「嘘よ。“貞節”しか当て嵌らないわ。」 「ねぇ、亜子ちゃん…。亜子ちゃんは眞緒さんのことどう思っていらっしゃるんですか…?」
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