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受け取った花束を花瓶に挿し、早々と入浴をすませて私の専用となった寝室で横になっていると、襖越しにバタバタと騒がしい音が聞こえた。 こんな夜ぐらい、適当な女でも捕まえてそこに泊まってくれば良かったものを。 何とも律儀な夫にもう数百回目の嫌気がさす。 どうせなら、決して動かぬ浮気の証拠を押さえて裁判所にでも駆け込んでやりたいくらいなのに。 耳から入ってくる雑音をすべて掻き消そうと布団を頭までかぶっていると、酔っぱらっているのかドタバタと煩わしい足音が一直線にこちらに向かって近付いてくる。 まさか…。 その懸念は見事に的中し、スパンッ!と襖が開いたかと思えば、あの忌わしい結婚式と同じように不躾に布団を捲りあげられた。
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