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「亜子…。」
熱い吐息を吐きながら、がむしゃらに私を抱きすくめるこの男を、私はなぜか振りほどくことができなかった。
あり得ないけど、
でも、酷く…、心地いい。
それが例え大嫌いな夫であっても、だ。
夢うつつの温もりの中、
耳元で私の名前を幾度も熱っぽく呼ぶその低い声は、
思いの外悪い気もしなくて、
一気に襲ってきた睡魔に抗えず私は目を閉じた。
「ねぇ、あこ…。」
その優しい声は、きっと私の錯覚。
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