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獅子谷さんたちを門の前まで見送ってから、一歩敷地内へと入れば無言で私から離れていく夫の背中を追い掛ける。
初めて役に立つことをしたのだから、労いと優しい言葉がほしかった。
頭を撫でてもらって、
「あの赤ちゃん可愛かったね」
なんて夫婦のような会話がしたかったのかもしれない。
たかがあれくらいのことで、
“私はいい妻でしょう?”
と、言いたいほどに図に乗っていた私は、足早に去ろうとする夫の裾を掴んでその顔を覗きこんだ。
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