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その日の夜。 「来週誕生日なんて聞いてない。」 と、私を腕の中に閉じ込めて漏らす彼のひとりごと。 きっと気の利くサツキが彼にこっそり教えてくれたんだろう。 その口調はいつもより随分優しくて甘いものだった。 「ネックレスとブレスレットならどっちがいい?」 「俺たちもまだ世間じゃ新婚なんて呼ばれてるんだから、初めての誕生日ぐらい派手に祝わないとな。」 「相変わらず細い指して。何号を買えばいいかわかんないだろ?」 「亜子の誕生日も大事だけど、俺たちの子どもの誕生日も早く作ってやりたいな。」 夜毎語りかける言葉は、毎晩私の誕生日の話しでもちきりで、嬉しい反面気恥しい気持ちでいっぱいだった。
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