4263人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
その日の夜。
「来週誕生日なんて聞いてない。」
と、私を腕の中に閉じ込めて漏らす彼のひとりごと。
きっと気の利くサツキが彼にこっそり教えてくれたんだろう。
その口調はいつもより随分優しくて甘いものだった。
「ネックレスとブレスレットならどっちがいい?」
「俺たちもまだ世間じゃ新婚なんて呼ばれてるんだから、初めての誕生日ぐらい派手に祝わないとな。」
「相変わらず細い指して。何号を買えばいいかわかんないだろ?」
「亜子の誕生日も大事だけど、俺たちの子どもの誕生日も早く作ってやりたいな。」
夜毎語りかける言葉は、毎晩私の誕生日の話しでもちきりで、嬉しい反面気恥しい気持ちでいっぱいだった。
最初のコメントを投稿しよう!