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「あぶー。だー。」 「もう、豹馬ったら。綺麗な奥様に抱っこしてもらってはしゃいじゃって。」 「そんな。でも、本当に可愛らしいですね…。」 「亜子さんにも、すぐに出来ますよ。」 「そう…ですね…。」 そう言われて千可子さんの腕に返すと、その赤ん坊はキャッキャッと嬉しそうに母のもとで笑っていた。 その後、 おそらく眞緒と獅子谷さんは学生時代の思い出話しをしていたのだろうけれど、あまり耳に入ってこなかった。 仮面夫婦の私たちにはきっと子どもなんて一生出来るわけがない。 そんなことを、他人の赤ん坊を抱かせてもらってから気付くなんて。 女としてこんなに惨めな気持ちを味わうなんて。 生まれて初めてだった。
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