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その夜、文化祭の準備といった慣れない協同作業があったからだろう。
俺はすぐに眠りについた。
少しセピアがかった景色が流れる。
ミンミンと蝉が命の限り音を鳴らす中、俺は公園のまん中に立っていた。
「霧矢何ぼーっとしてんだよ!」
声のする方に視線を変えると一人の少年が汗だくで手を振っている。
俺の足は自然と少年の元へと歩みを進める。
「秀行」
少年の名を声にすると少年は高々と笑う。
「あははは!
何だよ霧矢!
早く唯のところに行こうぜ。
だいぶ待たしてんだから」
そう言って少年は物体という物体が蜃気楼で揺れるほどうねる暑さの中、走り出した。
いつもそうだ。
俺は秀行にリードでもされているように一緒に走り出した。
懐かしい少年の背中に瞳が充血しているのが分かる。
二人で走る中、置き去りにするように流れる景色。
公園の土の匂い
古びた工場
ひび割れたアスファルト
木造の家が連なる住宅街
全てが懐かしく胸を圧迫する。
少年が足を止めた先はアパートの前だった。
アパートの階段に座り退屈そうに短い木の枝で地面をつつく少女がいる。
見覚えのある顔だ。
知らないわけがない。
「唯!霧矢連れてきたぞ!」
少年の声に少女は顔を上げる。
「こんにちは。
今日は何するの」
やはり間違いない。
目の前の少女は尾崎 唯だ。
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