第1章

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口元が震える。 俺はなんでこんなことを忘れていたんだ。 唯が見せてくれた三人の写真。 あれがなければ忘れていたなんて。 「なら今日は俺んち来いよ!」 秀行は唯と瞳を合わそうとはしない。 少し日焼けした秀行の頬は赤らんでいた。 俺と唯は言われるがまま、秀行に着いていく。 秀行の家に着くと懐かしい匂いが鼻孔に流れる。 階段を一段一段踏みしめながら秀行の部屋へと向かった。 相変わらずシンプルに片付けられた秀行の部屋。 そうだ。 秀行は昔から整理整頓をきつく親に言われてたんだ。 秀行は部屋へと入るなり自慢のジャズベースを鳴らす。 そして唯にこう言うんだ。 「唯、俺と霧矢は絶対音楽で有名になるから! そしたら一番に俺達のファンになってくれよ」 ベースを弾く秀行を瞳をきらきらとさせながら見つめる唯。 この光景を何故忘れていた。 俺の口はほとんど無意識に開いていた。 「なぁ秀行。 俺は絶対音楽を嫌いになんかならねぇから」 秀行は満面の笑みで俺と肩を組んだ。 「当たり前だろ! いつか最高の音楽を作ろうぜ兄弟」
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