第1章

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-丸松墓地- 「何故でしょうね。 僕が君に会いに来るといつも雨が降ります」 僕、溝渕 浩はあるはずのない返事を雨のなか待った。 大事なメンバーが眠る石を前に一人で笑顔を作る。 独り言のように言葉を続けた。 「恭輔も霧矢も秀行の弟の楽も皆一生懸命僕達の作ったオリジナルを練習しているんですよ。 あ、そうそう文化祭ライブでは恭輔の作った新曲も披露します」 ピアスを弄ってしまうのが僕の癖で秀行の前でも口のピアスを触りながら話していた。 返答もないただの石。 そう思うと虚しいかもしれない。 でも僕は信じていた。 この声はしっかりと秀行に届いているのだと。 皆の気持ちは届いているのだと。 しかしそれは裏を返せば一種の現実逃避なのかもしれない。 濡れた冷たい石に右手をかざした。 「秀行、僕達はずっと一緒です。 復活ライブが霧矢の学校の文化祭っていうのも新鮮でいいですよね。 僕達で最高のライブにしましょう」
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