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この世界に永遠なんてものは存在しない。
しかし兄貴の永遠は余りにも早すぎた。
退院から僅か3ヶ月後の5月、白血病再発。
ドナー見つからず。
どん底まで落とされた。
本当に視界が星屑1つ見えない黒。
ブラックアウトしたのだ。
唯一完全一致ではないが、俺の骨髄なら何とかなりそうだった。
勿論兄貴が助かるなら俺は何だってする覚悟は出来ていた。
しかし兄貴は拒んだ。
俺を断固として拒んだ。
そして季節は流れ肌寒くなる11月後半に肺炎を併発。
兄貴はもう助からない。
正直、医者が真っ白な悪魔に思えた。
自然と涙が流れない。
それどころか口の中はからからだ。
親の泣き叫ぶ声、病院の独特の匂い、ちかちかと点滅する切れかけの蛍光灯
今でも鮮明に覚えている。
兄貴は必死に声を振り絞り俺にこう言ったんだ。
「が…く、
がく聞い…てるか」
俺は頷くことで精一杯だった。
「お…れの…宝物…
ベース…やる…よ」
それが兄貴が俺にかけた最後の言葉だった。
先ほどまで一滴も出なかった涙が次々とこぼれ落ちる。
兄貴が最後まで大切に大切にしていたベース。
それを手放すと口にした兄貴。
兄貴は自分の最期を自覚していた。
「兄ちゃん!
そんなこと言うなよ!
兄ちゃん!」
俺は兄貴の前で泣き叫んだ。
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