第1章

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それは一人で発声練習をする為に河川敷にいた時のことだ。 日本に帰ってきても友達は一人も出来なかった。 虐められていた訳ではないのだが、今思えば俺から皆を拒否していたのだろう。 「歌えんの?」 いきなり声をかけてきた少年。 その少年こそが神崎 秀行だ。 「You're way. And go to somewhere.(邪魔だ。どっか行け)」 嫌味混じりに英語で突き放した。 そのつもりだった。 秀行は瞳をシャボン玉のようにキラキラと輝かせる。 そして遠ざかるどころか近付いてきて俺の両肩を握り揺らす。 「おぉ! お前すげぇじゃん! 英語出来んのかよ! かっけぇなぁ!」 情けないが反応が出来ず思考回路が一時停止する。 「で、歌も歌えんだろ! 最高じゃん! 俺神崎 秀行ってゆんだ! 俺のバンドのヴォーカルになってくれ! つかなれ!」 俺のことをこんな風に目を輝かせて見てくれる人間なんて出会ったことがなかった。 体の奥の方から何かが込み上げてくるような、燃える熱い物を感じた。 俺は秀行の肩を組み言ったんだ。 「俺は鎌倉 恭輔だ。 俺をヴォーカルにすんならくだらねぇバンドじゃ許さねぇぞ」 秀行は自信満々に笑顔のまま笑った。 「あはははは! アイムベリィハッピー! 最高のメンバーだからそれはねぇよ! あはははは!」
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