第1章

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季節は流れ5月に入った。 5月になれば日中は少し汗ばむくらいの気温になる。 温暖化とはここまで深刻なのだろうか。 初夏に差し掛かる2週間後には文化祭が始まる。 俺巳島 霧矢にとって今年の文化祭は違った。 去年は通常授業の時間を削ってまで文化祭の準備をする呑気な連中が目障りで仕方なかった。 しかし今年は違う。 今年は秀行と組んでいたhated personでライブに出演出来る。 最期の最期まで音楽を愛した親友が望んでいたことが実現できるのだ。 hated person 俺達は嫌われ者だ。 浩が墓の前で呟いた言葉を思い出す。 「嫌われ者が集まれば面白い」 本気の演奏を見せよう。 そんなことを文化祭の看板を塗りながら思う。 視線の先で必死に文化祭の準備をする尾崎を見つめる。 ここまで俺の学校生活を変えてくれたのは尾崎だ。 これが恋愛感情なのか分からない今、尾崎に近付くことは出来ない。 でも聴いて欲しいんだ。 俺達の音楽を一番聴いて欲しい相手だ。 これが俺なりの自己表現なのだ。
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