妖怪討伐 in 白帝学園

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時は流れ逢魔が時。 夕刻の印である暁色の空が薄く紫がかってきた頃、俺達は一匹の妖怪と対峙していた。 「光彩を放つ刃となりて!空雷波!(クウライハ)」 南雲の符を持つ手から光が溢れだし、それがいくつもの刃を形作り一つの個体に向かっていく。 「ぶるぅぁぁぁっっ!!」 顔の真ん中の一つ目をギョロっとさせ、足元まで長く伸びた両腕を振り回す。それだけで南雲の放った光の刃は凪ぎ払われた。 凪ぎ払われた光の刃は四方八方に飛び散り、その先では極々小さな爆発が起こっていた。それはすなわち霊力の籠めすぎを意味する現象。 「だから南雲、力籠めすぎだって!微力な霊力で最大限の術の能力を引き出せって言ってるじゃん!」 結界の外で指示を出す俺を一瞥しながら一つ目妖怪の単調な攻撃を難なく避ける南雲。 「頭では理解している!未だに身体が慣れないんだ!」 繰り出される拳の連撃をいなし、後ろに飛び退いて再び符を持つ手を前に突き出す。 「邪を清める閃光よ、その身を貫き無へと帰せ!」 懐から取り出した聖水を符にまんべんなく濡らした。 「邪光縛(ジャコウバク)!!」 聖水で濡らされた符が形を変え、目にも留まらぬ速さで一つ目妖怪に伸びてゆく。 一つ目妖怪は腕で受け止めようと試みるが間に合わず、その身体を眩い閃光が貫いた。 「……ふう、終わったか」 四散していく一つ目妖怪を遠目に見ながら一息つく南雲に近づき、言いたいことを吐き出した。 「毎回毎回力使いすぎ!今日も本当ならあと五件は依頼できたはずなのに、もうへばってんじゃん!」 「もうこのやり方が板についてしまってるんだからしょうがないだろう。というか、あと何件できるとかも分かるのか?」 「そのときの南雲の体調と力の流れ、あと体力的なことも一目見ればだいたいはね」 「……すごいな。よくそこまで見れるな」 授業が終わって逢魔が時になったら霊能科の横に設置されてる時計台に集合し、南雲が仕事用に張り巡らしている結界のすぐ外で俺が指示を出して、南雲が妖怪と戦う。 これが日課になってきつつある今日この頃である。
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