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白狐も嵐武様も優しいから何も言わないけど、きっと迷惑だったんだろうな。
幼い俺を心配して、仕事を遅らせて、きっと沢山上の神様達に怒られたのだろう。
成長した今でも、それは健在だった。
仕事をサボると言いつつ俺の部屋に来ては雑談をしたり遊ばれたり……ん?これは心配とは違うな。
でも、俺がいなかったらそんなことはなかったはずだ。仕事を遅らせたりして上の神様達にこってり絞られることもなかったはずなんだ。
きっと俺がここに居る限りそれは変わらない。
二人共、優しいから。
なんだかんだ言っても優しい二人だから、これから先もずっと俺を心配して無茶してしまうのだろう。
俺がいなかったら、それもなくなる。
御叶神様も、それを考慮して俺を学園に入学させたんだ。
ぎゅうっと狐の姿の白狐を抱き締める。
俺の熱が伝わったのか、こちらをじっと見つめる白狐。
「どうか、しましたか?」
しばしの沈黙の後、心配そうに俺を見上げる。俺の様子がおかしいことに、すぐに気づいてくれる。
だけど俺はもう、甘えちゃいけない。
「なんでもない。眠くなってきたから添い寝してよ、白狐!」
いつもと同じ笑顔で、いつも通りに。
白狐も暫くしてから「いいですよ」と答えてくれた。
神界では何の役にも立たない、お荷物な存在。
ただ守られるだけの存在。
そんなやつ、居て何になる?
白狐を抱き締めたまま布団に潜った俺はある決意をした。
――――――人間界で、普通の生活を送ろう
そうすれば皆のお荷物にならないし、自律できるし、良いことだ。
人間界に行ったら、神様達には会わないようにしよう。できるだけ距離を置いて仕事の邪魔にならないようにしたい。
そんなふうに固く決意した俺に気づきもせずに、白狐はそっと眠りについた。
俺もそれを追うように睡魔に襲われ、意識を手放した。
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