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場所は変わり女子寮。
となりの部屋は静かだ。同室の彼女に会いたくないから、仕事に行くか部屋にこもるかの二択になってるのだろう。
肩まである金髪を鬱陶しそうに耳にかけて自室の椅子に座る端正な顔立ちの彼女は、同室の無口な彼女への興味は全くなく、終業式が終わってすぐ任務に行っても気づいてなかった。
気配は感じないから部屋にはいない、と思った程度で、それ以上無口な彼女へ向ける興味は消え失せた。
そんなことよりも金髪の彼女はある問題で頭を抱えていた。
「…………このことを、報告するか否か……」
はぁ、と終業式後の何度目か分からないため息を吐き出して呟いた。
机に肘をつき、掌を額にあてていかにも困ったふうな表情の彼女は、異質なものが近づいてきているのに気が付かなかった。
「何を頭を抱えているんです?」
ふわり、と。
鍵をかけたはずの窓から顔を出し、本来なら学園内部に侵入すればサイレンが鳴るはずの異形の者が華麗に床へと着地した。
7月下旬で日差しは強く、風は一切吹かなかった。カーテンがずれて日差しの強さに一瞬顔をしかめるも、侵入してきたその人物に視線は釘付けになっていた。
「……あなたも知っての通り、そちらの情報は筒抜けですよ」
日差しのせいで白く見えるその人物の髪が、僅かに吹いた風に揺れる。
金髪の彼女と似たような口調で話すその人物の言葉に、彼女は動揺などしていなかった。
「……わかってます」
一種の覚悟を決めたような凛々しい顔で応える彼女に、侵入した人物は再び声をかける。
「……今回の件は、嵐武様に報告します」
その一言を言い終えた瞬間、突風が現れ、侵入者を包み込んだ。そして突風と一緒に消えていった侵入者。
「…………はぁ……」
彼女はまた、深いため息をこぼすのだった。
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